末の珠名~その伝説に挑戦する舞踊家を見た

伝説というものは口頭で伝えられるものや書物で伝えられるもの、碑文などで伝えられるもの、遺構などから見つかるものなど様々である。

しかしそのどれも、実際のこの目で確認することはできない、いわば幻のようなものだ。

その伝説がこの地、富津にもいくつかあるがそのなかで今まで恐らく具体的に誰も表現してこなかったであろう伝説が『末の珠名(すえのたまな)』である。

 

『末の珠名』

上総地方の周淮(すえ)という土地に存在したとされる美女。万葉集の高橋虫麻呂の歌として収められている。富津市北部には大小様々な古墳群が点在しているが、その中でも南関東で最大と言われている『内裏塚古墳』に、この伝説の美女『末の珠名』に関係した伝説が残されているのである。

伝説に関する詳細はさておき、この言わば目に見えない『歴史』『伝説』を表現するとはどういうことなのか。

この度は舞踊家『伎音戯律与(わざおぎりつよ)』さんによる日本の舞踊によって表現されるそれを追ってみた。

今回『末の珠名』を実際に舞踊による表現にこぎつけるまで、そのきっかけを掴むまでに数年を要したという。このフライヤーにはその日々が凝縮されているといっても過言ではない。

このときすでに彼女は『伎音戯律与』ではなく『末の珠名』となっているに違いない。

当時の東の国、上総地方のこの一地域に存在し、多くの男性を魅了したとされる一人の女性を今日演じる。地元富津の伝説を、地元富津の舞踊家が踊る。

会場にはすでに大勢のお客さんがご来場。緊張感と期待感が高まる。


 

この舞踊は次の3つの観点から成り立っている。

1.見える部分・・・美しさ、可愛さ、素朴さ。

2.見えない部分・・・恋心、愛情、恋愛、身体の変化。

3.気がついていない部分・・・母性愛、菩薩の心

 

 

万葉の世界へいざなうWaKaNaさんの演奏を伴う『心の体操』からこの演目は幕を開けた。心の体操とは、目を閉じて静かなるサックスの音色に己の心を和らげ整えていく大切な時間。良い心をさらに豊かにし、備える。


 

万葉の歌で名高い『高橋虫麻呂』

しなが鳥 安房に継ぎたる 梓弓 周准(すゑ)の珠名は 胸別けの 広き我妹 腰細の すがる娘子の その姿(かほ)の
きらきらしきに 花のごと 笑みて立てれば 玉鉾の 道行き人は 己が行く 道は行かずて 呼ばなくに 門に到りぬ さし並ぶ 隣の君は
あらかじめ 己妻離(か)れて 乞はなくに 鍵さへ奉る 人皆の かく惑へれば かほよきに 寄りてぞ妹は たはれてありける

 

 

 

見える部分・・・美しさ、可愛さ、素朴さ。


 

 

 

 

見えない部分・・・恋心、愛情、恋愛、身体の変化。


 

 

 

 

 

 

 

気がついていない部分・・・母性愛、菩薩の心。


 

たしかにここに珠名はいたのに・・・その全てが夢であったと気づき愕然とする虫麻呂。

 

夢はその心のなかにあるのだ。


今回の創作舞踊により、今まで文章でしか表されていなかった『末の珠名』があたかも現代に蘇ったように感じたのは私だけだろうか。悠久の時の流れの中で多くの人が生まれては消えていく中で千葉県富津市のこの小さな街において読まれた一遍の詩歌が、より鮮明なものとなって我々の眼前に現れたことは一種の衝撃である。

後に伎音戯律与さんはこう述べている。『内裏塚古墳郡は、現存する多彩で幅広い富津市域の歴史的文化財の中でも代表的なものであり、創作古典舞踊『内裏塚古墳伝説~末の珠名~』は後世に伝える無限の可能性を含む最新の表現となりました・・・今後は再演の可能性を視野に入れ十分に活用していただける作品へと高めながら、自国の文化をよく勉強し『富津市民憲章』にあります「教養を高め、文化の香り高いまちづくり」に貢献できますよう、益々精進致します。。』


 

この富津の地元のあるいは富津に縁のあるスタッフで構成された今回の演目『内裏塚古墳伝説 末の珠名』。この創作古典舞踊はそれを目にした多くの人々に影響を与え、これからもその歴史に刻まれた人物像を成長させていくのだろう。

 

【出演】
伎音戯律与(末の珠名)
凰真之輔(高橋虫麻呂)
WaKaNa(Sax)

企画・主催・制作・題字/伎音戯律与
監修/上杉義隆
指導・照明/音羽菊公(伎音戯無文)
司会/石村比呂美(かずさFM)
解説/藤平俊雄(富津澪の会)
受付/鈴木大輔
出店/富津っ子・モカトラカフェ・富津カレンダー・one chiba
アートディレクター/森覚
写真展示・撮影/茂木健一
音響/日野義憲
後援/かずさネットワークの会

 

 

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